film.

だれも知らないまちへふたりで

間違っていない

休日の昼間に行くととんでもない数の人間がいる町は、22時を越えて訪れるとまるで違う様子になる。

凶の割合が多いことで有名な寺も、人気がなくぼんやりとライトに照らされているだけだ。そこに続く、誰もが幸せそうに窮屈に歩いていた道はすべてシャッターが下りていてホテルに帰る外国人やモノ好きな写真家が時折立ち止まり写真を撮っている。
雨から逃げてアーケードに入ると、一瞬ぞっとするぐらい静かになる。
ほとんどがバックパッカーや荷物の多いアジア人西洋人で、東南アジアの少し治安の悪いエリアの様相だった。たい焼き屋かコンビニしか空いておらず、シャッターが閉められた店の前には家のない人たちがダンボールやビニールを使って寝床を確保していた。
俺は商店街を抜けた先にあるドン・キホーテで6000円の買い物して、台風に備えている。本当に必要になるのかわからない道具やろうそくも、ないよりはマシだと思って買ったが、結局使わなかった。
黄色の大きなビニール袋に2本の指を引っ掛けて何も知らない顔をして商店街の真ん中を歩いた。

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私が作りました #2

「……どちら様ですか?」
 プロポーズから数十秒の沈黙ののち、なんとかひねり出したのは、蚊の鳴くような声でまっとうな疑問。
「どちら様、そうだな……」少し考えて、「一番わかりやすい形で答えるなら、エンジニアかな」
「エンジニア?」
「そう、エンジニア。お前らの。いや正確には日本人の、だな」

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