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だれも知らないまちへふたりで

100年先の未来から僕が来た

 今日、お昼寝をしていると、100年先の未来から僕がやってきた。なんでも、100年先の僕は特権階級に属しているらしく、その特権を使い切って僕に会いに来たとのこと。
現実味など全くなかった。100年後の僕は今現在の僕とほとんど見た目が変わらず、声も変わらない。そのことを指摘すると、「そういう未来なんだ」と一言。詳しく言えないらしく、もう少し聞こうとすると口をパクパクさせるだけで声は出ていなかった。
「検閲がかかってるっぽい」とのこと。
 とにかく彼を座らせて、どうして権力を失うようなことをしてまで一世紀前にやってきたのかと問う。おもしろいから、と彼。
「100年先の未来について話してやろうと思って」
「でも、検閲かかってるんじゃないの?」
 彼は数秒沈黙した後、「まあ、その辺はなんとかなる」とごまかした。これ以上聞いても意味がなさそうだったので、100年先の未来について彼から話を聞いた。

 彼によると、100年先には
①税金の種類が膨大な量になっている。コーヒーを飲むときにかかるカフェイン税、紙を使用するときにかかる執筆税、何かをコピーするときにかかる印刷税など。果てには、生きているだけでかかる生存税なるものがあるらしい。とんでもない、と僕が言うと、彼はそれでも日本は今豊かな国なのだよと遠い目をする。
②ロシアが崩壊していて、今アメリカに対抗する国はメキシコ、トルコ、日本の三国だ。中国やヨーロッパ諸国は内政や環境問題に手一杯らしい。日本、まだ生き残っているんだねと感心する。彼は100年先の日本は“るつぼ”だよと笑う。移民のことだろうか。
③2080年ごろから人類から足の小指が消え始め、今では完全に足は四本指になっている。それがどうした。今までになかった人類の進化だよと彼。
④日本の首相は外国人である。それは驚きだった。外国籍で選挙に出馬できるばかりか、総理大臣になってしまうとは。彼は、人口減少がバカにできなくなってきた今、優秀な人材であれば国を任せてもいいという風潮になってきていると答えた。

 次は……といいかけたところで、彼は「時間だ」と席を立つ。
「じゃあな」
 一言残し、彼は律儀に玄関で一礼してから出ていった。過去の自分に対して礼儀もクソもないだろう。
 出ていった直後、忘れていたことを思い出し、慌ててドアを開けるが彼はもうそこにはいなかった。よくあるパターンだ。

 100年後まで生きている想像はできないけれど、彼が本物だったとしたら、もう少し明るい未来を聞かせてほしかった、と愚痴るのだった。