film.

だれも知らないまちへふたりで

行列のできる


今日はお昼に行こうと外に出たら強いにわか雨が降っていて、傘を持っていなかったので5分ほど行ったところにあるカレー屋にすらいけず、いくつかオフィスビルを渡って屋内にあるところで済ませようと思ったのだけど、飲食店街に着いた僕が見たのはそれはそれは長い行列だった。
雨に追いやられて集まったサラリーマンやらOLやらがありとあらゆる飲食店に行列を作り、わずかなお昼休みを他人が食べ終わるまでの時間に置き換えている。
なんとか空いている店を探そうとしても、そもそもその飲食店街の入り口すらどこかの店の行列によってふさがれている。
これはいったいどこまで続いているのだろうとある行列をさかのぼってみた。

2階から始まる行列は階段を下り1階のオフィスビル直結のエントランスの外壁にそってぐるっと一周し、スターバックスの行列と入り乱れながらなんとビルの外まで続いているではないか。
そのまま道路に面したカフェが出している、テラス席用に伸びたテントの下で窮屈そうに雨をしのぎながら待つ人々を越え遂に屋根が消えてもまだ行列は続いていた。
傘を持っていない人はびしょ濡れになりながら昼食を待っている。

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この人たちは自分が何に並んでいるかなんてわかっていない。
雨に濡れるのが嫌で屋内で移動できる店で済ませようとしたのに、そのために濡れてしまっては本末転倒だ。
ところが行列はここからまだ先が見えないほど続いていて、この調子だと隣駅まで続いていてもおかしくない。
濡れるのが嫌なのでそれ以上追うことはやめたが、気になって、行列に並ぶ人に「何に並んでいるのですか?」と聞いてみた。
その人はとんかつチェーンの名を答えた。一切悩んだ様子もなく、確信を持ってこの行列に参加しているようだった。
僕は怖くなって、お礼だけしてそそくさとその場を去った。明らかに昼休み中に間に合わない量の列と、この列の先に何があるのかということを知っている様子と、チェーン店にここまで並ぶ必要なんてないということと、行列のほとんどの人間がスマホをいじりながら変な姿勢で待っていること。

気が付いたらお昼休みも残り20分になっていたので、結局僕はオフィスビル内のファミリーマートで売れ残っていたペペロンチーノを買って昼食を済ませた。
レンジでそれを温めてもらっていると、同じように行列を嫌がってコンビニに流れ着いた人たちがまた列を作っていく。
この人たちは確かに確信して並んでいるのだ。
物理法則のようだと僕は思った。