film.

だれも知らないまちへふたりで

夜をゆく

夜行バスにはさまざまな人が乗っている。
くたびれたサラリーマン、旅行らしい学生の集団、就活生、帰省する人、目的がよくわからない人、作業着のまま乗っている人。親より年上の人が乗っているのを見ると、どこに向かうのだろうかと少し疑問に思う。

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昨日乗ったバスにはスーツのまま乗り込んでいる女性の学生がいた。おそらく就活だろうが、スーツのまま乗ると、皺になるし寝づらいし体温調整もしにくいだろうしで良いことがないのに勇気のある選択だ。ただ単に、夜行バスに乗ったことがなくて勝手を知らない可能性の方が大きいが。
後ろに座っている男性は席を変えたいと申し出ていたが、添乗員に軽くあしらわれていた。夜行バスなのに「誰かが下りた後に」と言っていて、一番早くても7時まで待たないといけないぞと思ったがそれでも席を変えたい情熱があったのだろうか。
一度テーマパーク行きの夜行バスに乗ったときに痛い目を見てから、そこが目的地のバスには乗らないようにしている。単純に主要都市に止まるだけのバスなら、それなりに夜行バス経験のある人たちが乗る。消灯後にスマホをいじるとか酒とするめを広げて車内を居酒屋に変えようとする学生はいない。

昨日ふと思ったことで、サラリーマンはなぜ夜行バスに乗るのだろうか。乗らざるを得ないのだろうか、と言い換えることもできる。
そもそも、平日に移動するということは、ほとんどの会社員は仕事をするために遠方に移動するのだ。つまり、その人が行かなければ仕事が成り立たないということだ。
なのになぜ、明らかに次の日のパフォーマンスが下がる夜行バスという手段を使うのか。
会社は新幹線代ぐらいぽんと出してくれたりしないのだろうか。もし上限があって、その範囲で収めたいとか、自費で行かないといけないとかなら、もう最悪だ。仕事をしにいくのに、その前の段階で神経を使うなんて絶対嫌だ。新幹線代を出してもらって、その分仕事をがんばればいいだけの話だろう。

夜行バスはともすれば奴隷船だ。
くたびれた人たちが狭いシートで質の悪い睡眠をとる。時として悪臭を放つ男性やいびきのうるさい男性がいる。向かう先がどんなに楽しい場所でも、乗っているときの気分は全くよくない。うまく眠れない日は本当に最悪だ。

そうして目的地についた朝の都会は、ラッシュアワーで僕は満員電車という奴隷船に乗り込み、帰路につくのだった。