film.

だれも知らないまちへふたりで

いつか卒業してしまうことについて。

学生諸君

君たちは「私はいま学生であり、いつか卒業してしまう」ということについて考えたことはあるか。普通に学生生活を送っていれば、18歳や22歳で「学生」という身分は失われてしまうのだ。そのあとは「社会人」などと呼ばれ、何かしらの価値を生み出すことを求められる。
今のこの学生という身分は、いつか失われてしまうのだ。
僕はそれをごまかしながらアホな顔して毎日を過ごしている。やれ単位が足りないだの、授業をさぼりたいなどとのたまいながら、その身分・特権が失われたあとのことは何も考えてやいない。
というようなことを、僕は先日の卒業式で実感した。僕はいつか卒業してしまうのだ。何も考えていなかったけど、これは危機的な状況ではないのか。
なぜなら僕は22年間ずっと学生だったからだ。やばいやばいと思っていてもこの大学を卒業すれば、そんなのはおかまいなしにさまざまな税金が僕を襲う。なんとおそろしいことか。
卒業すればもう二度と学生になることはできない。

そしてそれは、「今生きている」というレベルでも同じようなことが起こっている。今生きていて、いつか死んでしまう。そのことはいつかやってくるのだ。
卒業して社会に出ることよりも大事で、もっと危機的だ。
ほとんどの人間は「いつか死んでしまう」ことを無視している。死に向き合わず、生きている。その事実に気づかずにいる方が楽だから。

でも僕はごまかして生きていくしかない。
僕には「いつか死んでしまう」ということを考え抜く覚悟も勇気もないからだ。ごまかしながら、時々感じる抗えない何かに恐れつつ生きるしかない。