film.

だれも知らないまちへふたりで

私が作りました

・私が作りました 「私がつくりました」 と、全世界の映画館のスクリーンを乗っ取って、「神」と名乗る何者かが言ったのが三日前のことだ。 もちろん最初は誰も信用していなかった。タチの悪いいたずらだと思っていた。しかし、「全世界で」「同時に」「同じ…

丘の上の館 #3

『よそ者が島原不動産に訪れたという話は町の人々に一気に広まった。』『この町は観光者を大いに受け入れているものの、まだ狭く閉鎖的な町なのだ。口にこそしないが、後からやってきた人間に対し私たちの生活に踏み入れるな、と住人はみな思っている。現に…

タワレコにて

今日はツいてない日だ。僕はエレベーターで顔をしかめる。十時半から始まる講習があるのに、十時半に目が覚めるし、借りようと思った漫画は、昨日は一巻から五巻まであったのに、今日は五巻しかなかった。Bluetoothのイヤホンの充電は電車に乗ってすぐ切れる…

死んだ人

ばーん! 盆が床に打ち付けられる音が鳴り響く。学生たちはその音に驚き、狭い食堂内にほんの一瞬の静寂が訪れるが、何事もなかったように日常に戻っていく。 私は床に散乱する豚カルビ丼と揚げだし豆腐を無視して、カウンター席に座る彼の元へ走り寄る。「…

パスポート

当機はまもなく着陸態勢に入ります、というアナウンスで僕は目を覚ます。窓の外を見ると眼下に薄っすらと街明かりが見えていて、夜になっていることに気がつく。 今一度安全ベルトをお確かめください。無機質な客室乗務員の声、続いて、英語。 若干の尿意を…

足音はBGM

夏は暑いし、セミはうるさいし、俺の部屋のエアコンもずっとうーーーーーと異音を流していて、今年の夏は随分落ち着きがない。仕事もなにやらどたばたが続いていて、それなのにマネージャーはいつも元気そうで、機嫌が良い人や、ちゃんと頭の良い人の下で働…

正しい恋愛

「言いたいことがあるんだよ」 と、彼女が言った瞬間、僕は理解して、涙をぐっとこらえた。 今の今まで読んでいた小説の内容が途端に入ってこなくなり、鼓動が上がるのを感じる。隣の席では難しい顔をした女性が数字がたくさん書かれたエクセルとにらめっこ…

安心な僕らは風呂で寝ようぜ

今日、なんとなく風呂を沸かして、何をするでもなくぼーっと浸かっているとまどろんできて、気が付いたらしばらく眠ってしまっていた。 目を覚ますと首から下が溶けかかっていた。 俺はこのまま死んでしまうのだなと思ってあきらめてもう一度目を閉じたのだ…

踊り場

長年こうやっていろいろ書いている文章でさえまだまともにこなせていないというのに、俺は楽器がやりたいだの絵を描けるようになりたいだの、果ては事業を起こし遠くにいる誰かを救いたいなどとやりもしないことばかり想像し、口に出し、手と足はどこにも出…

街並み

高さ何メートルから落とせば愛の塊は砕けるのか。何気圧で涙は分散されるのか。そもそも流すべき涙などあるのか。吐き出すべき感情などあるのか!ないとしたら俺は何のためにこれを書いているのか。ミャンマーの荒野を歩く少女の心とシンクロして、その風景…

脇からカブトムシおじさん⑤

5.脇からカブトムシおじさんはどこだ それから1か月以上経ったあと、脇からカブトムシの話をしている小学生は1人もいなかった。公園では完全に手のひらからクワガタおじさんが覇権を握っていて、みんなそこら中でクワガタを戦わせていた。 あの時僕が予感し…

昔のツイートまとめ

たとえばこういうの ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー人間はみんな生まれた時から決まっているBPMがあって、それが合って一緒にいるだけで旋律が生まれることを運命の赤い糸と呼んでいるのだって音楽の神様が言ってた ー…

今日思ったこと

「首めっちゃかたいですね」 美容院で髪を洗ってもらったあとに言われた一言。 あんまりないですよね。ていうか、初めてですよね。 「首かたい」て何? って思って、5秒ぐらい無言になったのちに、「へ、へ~」みたいに何の広がりもない回答をしてしまいまし…

集中力がない

最近折り畳み傘を買いました。買うと使いたくなるじゃないですか。でも最近はあんまり雨も降らなくて、冬のいい天気がしばらく続いていましたね。でも少し前に通勤時間に雨が降っていました。なのでこりゃチャンスだと思って意気揚々と折り畳み傘を取り出し…

朝電車に乗ったら

朝電車に乗ったら 毎日ほぼ同じ時間に家を出て、毎日ほぼ同じタイミングですれ違うサラリーマンを意識しないところで覚えてしまっている。信号の変わるタイミングもなんとなく知っているので、このぐらいの速度で歩いていれば点滅中にわたり終えられるだろう…

星間はがき

『拝啓 渚さま 寒気のきびしい日が続いていますが、お変わりありませんか。 と少し恰好つけて始めてみたけど、そっちの季節はわからないね。 さらにこっちはずっと冬なので、寒気のきびしい日がずっと続いているらしいです。私はドームの外に出ないからわか…

善なるひき逃げ

右に曲がるべきだった。と23時のニュース番組で、ゲストのどこそこ大学の教授が言った。いやいや、そっちには小学生が2人もいたんですよ!と返すのは、大御所芸能人。 画面下部にはテロップで「自動運転による死亡事故 人工知能の正義とは」と表示されている…

もう少し考えて行動しろ

人生には幸福でも不幸でもない時間が圧倒的に多い。学生が授業を受けている間の何も考えてないときや、社会人になってルーチンワークをこなしているときとか、無の時間が日常にはたくさんある。でも世の中にはいつもつらいこと言ってる人もいるし一生ポジテ…

行列のできる

今日はお昼に行こうと外に出たら強いにわか雨が降っていて、傘を持っていなかったので5分ほど行ったところにあるカレー屋にすらいけず、いくつかオフィスビルを渡って屋内にあるところで済ませようと思ったのだけど、飲食店街に着いた僕が見たのはそれはそれ…

無思想無頓着

聴くと胸が締め付けられる曲がある。それは曲調の問題ではなく、俺がそれをどの時期に一番聴いていたかという記憶の問題だ。でももっと言えばそのころを思い出さなくてもなぜか泣きたくなるような曲だってある。それはどこに由来しているんだ? もう書くこと…

僕のラ・ラ・ランド

新しいパソコンがほしい。と思って500円貯金を始めました。10万円たまったらこれを資金にしてマックブックを買いたいですね。今使っているパソコンはもう5年ぐらいの付き合いになるんですが、当時は最新モデルだったウルトラブックももう当たり前のものにな…

書く練習

「最近全然更新してないな~。とはいえどれだけ前でも10月ぐらいに一回更新してただろうな」 「8月!?!?!?!?!?!?!?!?!?!??!」 「半年も前なのかよ」 「俺はこの半年間何をしていたんだ?」 「そういえば8月のこのころ何となくブログを…

ひまわりの海

・ひまわりの海 寒いよね。 まだ大丈夫だよ。 でもさ、こうやって、「寒いね」って言って「まだ大丈夫だよ」って返ってくるような関係はあたたかいよね。 くせー。今寒くなったから早く帰ろうよ。 寒すぎる。いっそ南半球に飛んでいっちゃいたいぐらい。 な…

エスカレーターにモノ申す

エスカレーター、あれはよくない。地域によって右寄りだの左寄りだのルールが決まっていてややこしい。さらにこのことばは政治的な意味を含んでいるようにもとれる。「大阪は右寄りなんだって」などと言えば、まるで大阪が街を上げて右翼なのかのように聞こ…

The last man

・The last man 「これ、目にいいんだって」 昼休み、食堂で食事中の私の隣に座った近藤が差し出したのは一枚のDVDだ。ジャケットには海を背に仁王立ちをして いる外国人風の男の風景が載っていて、目に良さそうには見えない。タイトルは「The last man」「…

お菓子の宇宙船

・お菓子の宇宙船 ここはお菓子の宇宙船。 船体はチョコレート、両翼はクッキー。スポンジの椅子にキャンディーの操縦桿。モニターは金平糖でできていて、スイッチはカラフルなラムネ。エンジンはコーラと甘いオレンジジュース。もちろん、パイロットの宇宙…

丘の上の館 #2

≪丘の上の館を一目見た瞬間、私は「欲しい」と思った。「ここが執筆人生の墓場だ」と。 そう思うや否や、私は丘を駆け下っていた。そんなはずはないのに、一刻も早くあの館を自分のものにしなければなくなってしまうような気がしたからだ。丘の上の館の存在…

自動

あなたはメガネを食べたことがあるだろうか。俺はない。メガネは食べ物ではないからだ。しかしある種の人々は酒に酔うとメガネを醤油につけたりマドラー代わりにしてカクテルを混ぜたりするのだ。これはメガネを何かしらの食べ物、あるいは食事に必要なもの…

墓屋のセールストーク

こんばんは。梅雨に入り自転車もおちおち乗っていられない近頃です。ところで、お墓屋さんってあるじゃないですか。あれなんていうんだ?墓石屋?墓石屋でいいのか。あの人たちってどの人を相手に商売してるんでしょうか。だって、墓石買うってことは少なく…

丘の上の館 #1

・丘の上の館 #1 『丘の上の館が丘の上の館と呼ばれるようになったのは、遠い遠い昔のことらしい。今でこそこの丘の上にはたくさんの建造物が並んでいるが、丘の上の館が丘の上の館と呼ばれる以前は、丘の上に何一つ建物はなく、丘の上の館がその第一の建造…