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だれも知らないまちへふたりで

今日思わなかったこと

▼思わなかったことを書くことは不可能
前回今日思ったことを書いたので、今回は今日思わなかったことを書こうと思ったんですが、無理でした。
なぜか。
1.今日思わなかったことは無限にあるから。
2.「思わなかったこと」を書くことは原理的に不可能だから。
1については言うまでもなく、僕が思わなかったことというのは、僕以外の他の人が思ったことであり、それはほぼ無限にあるから書きだすことはできない。
2も別に難しい話ではなくて、思わなかったことを書こうとするとき、その「思わなかったこと」を“思い浮かべる”ので、この瞬間に「思わなかったこと」は「思ったこと」になってしまう。1以前の問題で、そもそも「思わなかったこと」を書くことは不可能という話でした。

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丘の上の館 #3

『よそ者が島原不動産に訪れたという話は町の人々に一気に広まった。』
『この町は観光者を大いに受け入れているものの、まだ狭く閉鎖的な町なのだ。口にこそしないが、後からやってきた人間に対し私たちの生活に踏み入れるな、と住人はみな思っている。現に、この町に越してきた者は奇妙な心地悪さを感じ、2年以内にまた引っ越してしまう。早い人で1か月というのもあった。
 そんな中でひときわ外様に厳しいのが、島原雅也だった。彼はこの町の唯一の不動産仲介業者であり、町のほぼすべての住人の物件を世話している。島原は町の住人以外を接客しようという気がまるでなく、店に来ても奥に入ったまま出てこない。一度訪れた移住希望者はだいたいそこで諦めるか、町の外にある業者を介しわずかに残っている島原不動産管轄外の物件に入居する。それも結局すぐに引っ越してしまうのだが。』

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